東京湾に“海の森”を育てる 日本製鉄の挑戦

環境問題

千葉県立現代産業科学館「東京湾と海の森づくり」講演会レポート

訪問日:2025年10月18日 / 会場:千葉県立現代産業科学館(市川市)

千葉県市川市にある千葉県立現代産業科学館で開催された講演会「東京湾と海の森づくり」を拝聴しました。講師は、日本製鉄株式会社 技術開発本部 先端技術研究所の吉村 航氏。企業が海とどう向き合うかを、自らの技術と実践から語ってくださいました。

日本製鉄の海の森づくりの取り組み
https://www.nipponsteel.com/sustainability/env/biodiversity/sea.html

会場には小学生くらいのお子さん連れのご家族、年配の地域の方々など様々な層の来場者。
ロビーでは「海の生き物スタンプ」を押して手作りサコッシュをつくるワークショップも開催され、子どもたちが楽しそうに参加している光景が印象的でした。


海の森(藻場)とは? ― 海の命が育つ“ゆりかご”

講演の中で印象的だった表現、「藻場は“海の森”」。
海藻や海草が群生する藻場は、小魚、貝、エビなどが身を隠しながら育つ“ゆりかご”として、海の生態系において極めて重要な役割を果たしています。

しかし、現実にはこの藻場が減少傾向にあります。
国内の調査では、2018〜2020年度の全国藻場分布調査で、全国の藻場面積が 1,643.4 km²(海藻藻場1,225.7 km²、アマモ場329.9 km²)と報告されています。出典:環境省
また、1977〜78年時点で約2,076 km²あった岩礁性藻場が、2000年代には22%減少していたという報告もあります。出典:J-STAGE

この減少の要因には、衰退要因として「ウニの食害(26%)」「植食性魚類の食害(21%)」「海水温上昇(21%)」などが挙げられています。出典:農林水産省ジャパンファームアセット


日本製鉄による「海の森づくり」

日本製鉄では、鉄鋼スラグ(鉄を精錬する際に発生する副生成物)に注目。スラグに含まれる鉄分を海中に供給することで、藻場を再生できる環境を整える取り組みを進めています。藻場を増やすことで、魚のすみかを増やし、生物多様性を高め、さらに「ブルーカーボン(海・沿岸生態系によるCO₂吸収)」の観点からも意義があります。

具体的な協働地域として、千葉県君津市北海道増毛町が紹介されました。こうした地域では、磯焼け(藻場が消えて岩肌だけになる現象)対策として企業・自治体・地域住民が一体となった活動が展開されています。

また、日本や韓国では工業立地の歴史的事情から“沿岸に製鉄所がある”という背景があります。鉄鉱石を輸入するため港湾近くに立地し、同時にCO₂排出産業でもあるため、海・産業・環境が重なった担いを企業が負っている、というお話もありました。


子どもからの質問が胸に残った瞬間

講演後、子どもからこんな質問がありました。

「海の生き物が好きで、海の生き物に携わる仕事をしたいです。どうしたらいいでしょうか?」
吉村さんはこう答えました。
「好きという気持ちを大事にしてください。生き物を観察し、調べ、研究していくことを続けるといいですよ。私自身、好きな研究がきっかけで今の仕事に出会いました。」

子どもの問いかけと、それに丁寧に返される言葉を聞きながら、
今、海について知ることが、次の世代の選択につながっていくのだと感じました。
目の前の子どもたちが大人になる頃、どんな海が残っているのか。
その未来を思うと、この活動の意味がより鮮明になります。


後日、海を見たくなって三番瀬へ

後日、私と相棒チワワのレオとで ふなばし三番瀬海浜公園 を訪れました。工場地帯が海の向こうに見えて、「あっちに日本製鉄の工場があるのかな」なんて思いながら散策。
海岸では海外から来た方がゴミ拾い活動をしていて、少し交流。海は遠くない場所で、私たちの暮らしと重なっているのだという実感が湧きました。


海の環境の今

① ブルーカーボン:海が担う“見えないCO2吸収源”

  • 海は大気中のCO₂を吸収し、海草・海藻・塩性湿地・マングローブ・サンゴ礁などの沿岸生態系に炭素が蓄えられています。この海洋生態系による炭素吸収は 「ブルーカーボン」 と呼ばれています。

    ブルーカーボンの重要なポイント>
  • 地球のCO₂吸収の 約25% は海が担っている
    出典:NOAA(米国海洋大気庁)ナゾロジー記事
  • 沿岸生態系(藻場・海草・マングローブ)は、陸上森林の最大5倍の速さで炭素を吸収
    出典:UNEP(国連環境計画)住友林業記事
  • しかし、世界中の藻場は毎年約7%ずつ失われている
    出典:UNEP
  • 日本でも「海の森」は、温室効果ガス削減計画の中で正式に吸収源として認められています。
    環境省『我が国のブルーカーボン取り組み事例

② サンゴ礁の減少

  • サンゴ礁は「海の都市」と呼ばれるほど、多様な生き物が集まる場所です。サンゴ礁には、地球全体の海の0.1%未満しか存在しないにもかかわらず、海洋生物の約25%が依存しているとも言われています。サンゴ礁が減ることで我々の食卓に影響が出る可能性もあります。またサンゴ礁は海面近くで波を砕くため台風や高波の勢いを弱める防災機能もあります。以下はサンゴ礁がおかれている状況です。
  • 世界のサンゴ礁のうち、温暖化が1.5℃上昇した場合、70〜90%のサンゴ礁が消失するという予測があります。
    出典:NASA
  • 世界のサンゴ種の約44%が絶滅リスクにさらされているという報告もあります。出典:ICRI
  • また、2023年〜2025年にかけて、世界のサンゴ礁の84%が漂白レベルの熱ストレス下にあったと報じられています。出典:ICRI

③ 海洋資源・漁業・温暖化・マイクロプラスチック

  • 海水温の上昇や生息環境の変化により、魚類など海洋資源が減少傾向にあります。例えば、温暖化が進むと魚の種類が北上し、昔は獲れた魚が獲れなくなる地域も出ています。出典:ipcc.ch
  • マイクロプラスチック問題も深刻で、プラスチックが細かく砕けたものが海洋生物の体内に入り、それが人間の食卓にまで回る可能性があります。出典:大阪市

私たちにできること

行動紐付くSDGs
海岸の清掃に参加する・ボランティアに登録する14. 海の豊かさを守ろう
海にやさしい消費(例えば、持続可能な漁業の水産物を選ぶ)12. つくる責任・つかう責任
地元の海・環境イベントに家族で参加する・子どもと学ぶ17. パートナーシップで目標を達成しよう

「知る → 関心を持つ → できることをする」という循環を大切にしたいですね。


おわりに

身近な博物館での講演に参加し、海と環境を見つめ直したこの一日。
海は遠く離れた世界ではなく、私たちの暮らしの“すぐそば”にあります。

知ることが、未来を変える第一歩です。
みなさんも、近くの博物館の講演をチェックしてみてはいかがでしょう。

あとがき

ライターのあおやんです。
最後まで読んでくださってありがとうございます。

今回は近くの海も見に行って、レオも楽しそうで良い取材の回になりました。
(うちのチワワは砂だらけになったので後が大変でしたが)
これからも海を大切にすることを忘れずに行きたいですね!

※ChatGPTにサポートしてもらい記事を製作しました。

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