【参加レポート】子どもの未来応援フォーラム2026:社会全体で支える、子どもたちの明日

社会課題

先日、開催された「子どもの未来応援フォーラム2026 – 官公民連携による貧困対策」にオンラインで参加しました。子ども家庭庁プレスリリース

「子どもの貧困」という言葉を耳にする機会が増えましたが、具体的にどのような支援が行われ、私たちに何ができるのか、詳しく知る機会はそう多くありません。今回のフォーラムは、政府、企業、そしてNPOがどのように連携し、この大きな課題に取り組んでいるのかを学ぶ非常に貴重な場となりました。

本記事では、フォーラムの内容を振り返りながら、心に残ったポイントや具体的な支援の形について共有したいと思います。

この記事でわかること

  • 「子どもの未来応援国民運動」の三本柱(応援基金・マッチング事業・広報啓発)
  • 株式会社いちばん屋(CoCo壱番屋)の「顔の見える支援」と継続の仕組み
  • NPO法人と企業(NTTドコモ、イトーヨーカドー)による官公民連携の具体的な取り組み事例
  • 日本の子どもの貧困率と養育費の受け取り状況(国際比較含む)
  • 支援の前に問うべき制度的な課題(養育費・18歳の壁)

第1部:官公民連携の最前線と「顔の見える支援」

第一部の基調講演では、子ども家庭庁支援局長の斎藤薫氏による挨拶から始まり、同庁の高知淳企画調整官と、株式会社いちばん屋(カレーハウスCoCo壱番屋)の担当者の方々によるトークセッションが行われました。

社会全体で子どもを支える「国民運動」

まず強調されていたのは、平成27年から続く「子どもの未来応援国民運動」の重要性です。貧困の連鎖を断ち切るためには、国だけでなく、企業、NPO、そして地域住民が一体となって子どもたちを支える必要があります。

この国民運動には、以下の「三本柱」があります。

  • 子どもの未来応援基金:企業や個人からの寄付を、現場で活動するNPO等へ助成する仕組み。寄付総額は24億円を超えています。
  • マッチング事業:「支援したい企業」と「支援を求めるNPO」をつなぐ架け橋。資金だけでなく、物品や体験機会の提供も行われます。
  • 広報啓発:「声なき声」に気づき、支援の輪を広げるための情報発信。

株式会社壱番屋の「創業者の想い」と継続力

特に印象深かったのは、株式会社壱番屋の取り組みです。「カレーハウスCoCo壱番屋」でおなじみの同社ですが、その社会貢献活動には並々ならぬ情熱がありました。

活動の原点は、孤児院で育った創業者・宗次德二氏の「恵まれない子どもたちを支援したい」という強い想いです。同社では経常利益の約1%を寄付に充てることをルール化し、社員がサンタクロースに扮してカレーを振る舞うなど、「顔の見える支援」を徹底しています。

単にお金を寄付するだけでなく、児童養護施設へ直接ヒアリングを行い、本当に必要なもの(自転車やソファーなど)を寄贈したり、子ども自身にランドセルを選んでもらったりと、心の通った支援が行われています。子ども家庭庁との連携により、現在は全国47都道府県への支援拡大を目指しているというお話には、企業の底力を感じました。

第2部:NPOと企業の連携が生む、新たな可能性

第二部のパネルディスカッションでは、NPO法人と企業の担当者が登壇し、それぞれの強みを活かした連携について議論が交わされました。

現場からの声:多様化する困難と「おせっかい」の力

認定NPO法人豊島子どもワクワクネットワークの栗林千恵子氏は、地域のおばちゃん的な「おせっかい」の重要性を語りました。子ども食堂や学習支援だけでなく、宿泊可能な居場所「わくわくホーム」など、子どもの「助けて」という声に応える形で支援を次々と広げてきた姿勢には頭が下がります。

また、NPO法人サンカクシャの荒井氏は、行政の支援が手薄になりがちな18歳以上の「若者」への支援について言及しました。親を頼れず、住まいや仕事を失い孤立する若者に対し、平均3年にも及ぶ伴走支援と約352万円の費用が必要であるという現実は、私たち社会全体が直視すべき課題です。

企業の強みを活かした社会貢献

一方、企業側も自社のリソースを最大限に活用しています。

NTTドコモ(涌井氏):テクノロジーと人的資源の活用

NTTドコモの涌井氏は、企業の社会貢献が独りよがりにならないよう常に懸念していると語りました。だからこそ、政府主導の「子どもの未来応援国民運動」のようなプラットフォームは、支援が本当に困っている人に届くという安心感を与えてくれると強調しました。

同社の強みは、テクノロジーと1億人の顧客基盤、そして社員の「人間力」です。具体的には、キャッシュレス決済を活用した寄付プラットフォームの提供、スマホ安全教室やキャリア教育などを展開しています。特に注目すべきは、「支援したい人」と「支援を求める人」をつなぐ役割を重視している点です。

また、社員の自発的な参加を促す「アンバサダー制度」を導入しており、社会貢献活動への参加が顧客の真のニーズを理解する力を養い、事業にも好影響をもたらしているとのことです。今後は「若者」支援も視野に入れていきたいと述べていました。

イトーヨーカドー(小山氏):店舗をハブとした地域貢献

イトーヨーカドーの小山氏は、創業以来の「信用」と「誠実さ」という企業理念が社会貢献活動の根幹にあると語りました。全国の店舗を地域コミュニティのハブと位置づけ、顧客と共に社会課題に取り組む姿勢が印象的でした。

具体的な取り組みとしては、レジ募金、ベルマーク回収、フードドライブ、そして子ども向けの「ちびっこ職場体験」などがあります。これらは単なる社会貢献活動ではなく、顧客からの信頼を獲得し、従業員のやりがいを高める好循環を生み出しています。

小山氏は、社会貢献活動の目的は企業価値向上が直接の目的ではなく、顧客からの信頼や従業員のやりがいに繋がる好循環を生むことが本質だと強調しました。そして、これから支援を始める企業へのアドバイスとして、「大きく構えず、共感者と『小さく始める』ことが大切」と述べていました。

パネルディスカッションで強調されたポイント

このパネルディスカッションでは、以下の5つのポイントが強調されていました。

1. 多様な支援の必要性
子ども食堂や学習支援だけでなく、家庭訪問(アウトリーチ)、宿泊可能な居場所、さらには行政の支援が手薄な18歳以上の「若者」への住まい・仕事・居場所の包括的なサポートなど、多様な困難に対応するための多層的なセーフティネットが不可欠です。

2. 連携とプラットフォームの価値
NPO、企業、地域住民など多様な主体が連携し、「面」で課題に取り組むためのプラットフォームが重要です。「子どもの未来応援国民運動」のような仕組みは、企業が安心して支援できる信頼性を提供し、NPOの組織的成長を促す役割も果たしています。

3. 事業特性を活かした社会貢献
ドコモの通信技術やプラットフォーム、イトーヨーカドーの全国の店舗網のように、各企業が自社の強みを最大限に活用することで、効果的かつ持続可能な社会貢献が可能となります。

4. 「小さく始める」ことの重要性
企業や個人が支援活動に参加する際、最初から大きく構える必要はありません。共感者と共に、自分たちの強みを活かしてできることから「小さく始める」ことが、活動を継続し広げていく鍵となります。

5. 支援の好循環
地域に根差した社会貢献活動は、顧客からの信頼を獲得し、従業員のやりがいを高めます。これが企業の価値向上や活動活性化に繋がり、企業価値と社会貢献が両立する好循環を生み出します。

データで見る:子どもの貧困と養育費の現実

ここで、フォーラムで語られた支援活動の背景にある、日本の子どもの貧困の現状を数字で確認しておきましょう。特に注目したいのは、「なぜひとり親世帯が貧困に陥りやすいのか」という構造的な問題です。

子どもの貧困率:約9人に1人

厚生労働省の「令和4年国民生活基礎調査」によると、日本の子どもの貧困率は11.5%です。約9人に1人の子どもが相対的貧困の状態にあります。特に深刻なのは、ひとり親世帯の貧困率で44.5%と、約2世帯に1世帯が貧困状態にあることがわかります。

出典:厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」

養育費の受け取り状況:わずか28.1%

ひとり親世帯の貧困を語る上で見過ごせないのが、「養育費」の問題です。厚生労働省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」によると、離婚した母子世帯のうち、養育費の取り決めをしている割合は46.7%。つまり、半数以上が取り決めすらしていません。

さらに深刻なのは、実際に養育費を受け取っている母子世帯はわずか28.1%という現実です。取り決めをしていても、実際には支払われないケースが多いのです。養育費を取り決めている世帯に限っても、「現在も受給している」のは57.7%にとどまります。

理由としては「相手と関わりたくない」(31.4%)、「相手に支払う能力がないと思った」(20.8%)、「相手に支払う意思がないと思った」(17.8%)などが挙げられています。

出典:厚生労働省「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」

国際比較:日本の養育費回収率の低さ

諸外国と比較すると、この数字の深刻さがより鮮明になります。たとえばスウェーデンでは、養育費を受け取っている子どもは75%に達します(2016年データ)。これは国が養育費の立て替えや強制徴収の仕組みを整備しているためです。

日本でも2011年に民法が改正され、離婚時の取り決め事項として「養育費の分担」が明記されましたが、制度の実効性はまだ十分とは言えません。近年、一部の自治体が養育費の督促や法的措置を支援する動きも出てきていますが、全国的な広がりにはまだ時間がかかりそうです。

参考:PRESIDENT Online「渋る親の給料から国が天引き…日本と大違いの諸外国」

つまり、ひとり親世帯の貧困の背景には、「離婚後の養育費が支払われない」という構造的な問題が大きく影響しているのです。この現実を踏まえると、子ども食堂や学習支援などの「民間による支え」が、いかに重要な役割を果たしているかが見えてきます。

「支援」の前に問うべきこと:私たちは何を見落としているのか

フォーラムの最後に、モデレーターの正井まや氏が投げかけた言葉が印象に残っています。「できることから小さく始める」——確かにその通りです。クリック募金も、レジ募金も、地域の活動を知ることも、どれも大切な一歩でしょう。

しかし、一歩踏み込んで考えてみたいのです。

養育費が支払われない社会で、誰が穴を埋めるのか

データのセクションで見たように、日本では離婚した母子世帯の7割以上が養育費を受け取っていません。取り決めすら半数に満たない。本来、子どもを育てる責任は両親にあるはずなのに、その責任が果たされていない現実があります。

企業やNPOによる「民間の善意」は素晴らしい。けれど、それは本来、制度として保障されるべきものを「補完」しているだけではないでしょうか。

スウェーデンのように、国が養育費を立て替え、強制徴収する仕組みがあれば、ひとり親世帯の貧困率は大きく改善するかもしれません。日本にもそうした制度整備を求める声は上がっていますが、まだ実現には至っていません。私たちは「支援しよう」と呼びかける前に、「なぜ制度が機能していないのか」を問うべきではないでしょうか。

18歳で支援が途切れる矛盾

フォーラムで荒井氏(NPO法人サンカクシャ)が語った言葉も重く響きました。行政の支援は「子ども」を対象とするため、18歳を超えると途端に手薄になる。親を頼れず、住まいも仕事も失った若者が、SNSで助けを求めた結果、闇バイトなどの犯罪に巻き込まれていく——。

支援の「年齢の壁」は、制度設計の都合でしかありません。困難は18歳の誕生日に消えるわけではないのに、支援が分断されている。この構造的な問題を、民間の善意だけで補い続けることが本当に正しいのでしょうか。

私たちが向き合うべき「問い」

今回のフォーラムを振り返って感じるのは、登壇者たちの真摯な姿勢と、一方で制度の限界です。

壱番屋の「経常利益の1%を寄付に充てる」という仕組みは素晴らしい。ドコモやイトーヨーカドーの事業特性を活かした支援も、NPOの現場での伴走支援も、すべて尊いものです。けれど、それらは本来「あればいいもの」ではなく、「なければ命や尊厳が脅かされる」レベルのセーフティネットになってしまっています。ここで彼らの活動に頼るだけではなく私たち自身でも考え続ける必要があると思いました。

  • 養育費の不払いを放置する制度を、このまま見過ごすのか。
  • 18歳で支援が途切れる制度設計を、変えるべきではないのか。
  • 困りごとを声に出しにくい社会の空気を、どう変えていくのか。

クリック募金やレジ募金も、本当に素晴らしい活動です。でもそれだけで満足してしまったら、構造的な問題は何も変わりません。

フォーラムで何度も繰り返された「子どもの未来は日本の未来」という言葉。それが本当なら、私たちは制度そのものを問い直す必要がないでしょうか。民間の善意に依存し続ける社会ではなく、制度として子どもを守れる社会を、どう作っていくのか。

その問いに向き合うことが、本当の意味で「子どもの未来を応援する」ことではないでしょうか。

あとがき

ライターのあおやんです。
最後まで読んでくださってありがとうございます。

前回、子ども食堂さんに訪問した時の記事がこちらです。
併せて読んでくださると嬉しいです。
子ども食堂はなぜ毎日必要なのか:江戸川区NPO法人らいおんはーとインタビュー

※GenSparkにサポートしてもらい記事を製作しました。

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